フランス滞在
2015年5月頃から11月までのパリでの半年間は
その後の制作に大きな影響を与えたと思います。
Cite Internationale Des Artsはレジデンスのような所で
世界中からあらゆるジャンルのアーティストが
パリの中心地で芸術を学びに集まってきています。
滞在場所はアトリエ兼住居になっていて
作品の制作もできますし発表することもできます。
人によっては1年滞在の人もいれば2ヶ月間の人もいて
パリを拠点に観光で終わってしまう人もいます。
自分は半年と割とのんびりと生活できましたが
帰国前に自分のアトリエで個展を開きたかったので
大半を制作に費やしました。
煮詰まると気分転換に歩いてでも行ける距離にある
ルーヴル美術館やポンピドゥセンター
オランジェリーなどに通い体の隅々までアートを感じながら
過ごしていました。
流石は芸術の都だなと感じたひとつは
画材屋さんでの取り扱っているキャンバスの幅広サイズや
画材の豊富さに驚かされました。
商品の陳列のしかたなどもオシャレで
見ていてとて引き込まれました。
この半年の間で一番大きな出来事は
自分がオープンアトリエ(個展)予定の
2週間前の11月13日に起こりました。
そう、パリで同時多発テロが起こったのです。
その日自分はアトリエで制作をしていたので
全く気づいていませんでしたが
親からの電話でしりました。
本当に自分の滞在している場所から
そう遠くない所で起こった自体に
どうしたらいいのか軽くパニックになりましたが
覚悟を決め個展は予定通りに開催することに決めました。
最初は誰もこないのではと不安に思っていたのですが
たったの数時間ではありましたが
100人近い人が観に来てくれました。
英語にはかなり課題を感じましたが確実に自分の作品は
海外でも通用するという実感がわきました。
展示の後静まりかえったテロのあった現場に足を運びました。
まだ犯人が捕まっていなかったので内心ビクビクしてましたが
そのたむけられた花の絨毯やメッセージ
人種の壁を越え祈る人々を見たときの光景が
今も頭に焼き付いています。
その時、自分が見て学ばなければいけないものが
美術館の額縁の中には無いのだと気づかせてくれました。
本当に見なければいけない物が日常の中にこそ
あるのだと分かったのです。
そこから描くべきリアリティーとはなんなのかを思惟し
現在の作風にたどり着きました。
それで意識的にあの日見た記憶の形を描き始めました。
あっという間の半年でしたが
こんなにも濃密な日々を過ごしたのは後にも先にも
このときだけだと思っています。